作業者教育の1つの方向性

特に最近に限った話ではないのですが、工場の作業者として派遣労働者や外国人実習生の比率がかなり増えてきています。中には作業者のほとんどが外国人労働者で、日本人は1割程度しかいないという企業もあります。

それらの企業でよく聞かれることは、教育が進まない、作業マニュアルを理解しない、その結果として作業ミスが多いという事で、現場の責任者も派遣社員や外国人に一生懸命教えようとしているのですが、結果的にミスが一向に減らないという話です。

この原因の1つは、「従来の正社員並みの動きを求めてしまう」という所にあります。良く言われる事として「段取り替えが出来ない」と言う話がありますが、色々教えても派遣社員はすぐに入れ替わってしまうし、外国人も言葉の壁があってなかなか覚えないという話ですね。現場としては正社員を入れてくれないのだから派遣や外国人に期待するのは当然かもしれませんが、残念ながら従来型の教育を行っていたら、これらの問題はクリヤできずに何時までも現場の生産性を低下させる要因になってしまうのです。

それではどうすべきかという事ですが、簡単に言うと「作業」と「判断」を分離させ、派遣や外国人には「作業」を徹底してもらうと言う事です。多分この辺は分かっているという所もあるのかもしれませんが、実際に標準書やマニュアルをよく見て行くと結構多くの部分で「判断」を求めてしまっているのです。品質マニュアルでは「異常が無いか確認すること」を求める項目があったりしますが、これはまさに「判断」を求めているわけで、正常と異常の判断ポイントが明確にされた上で、その判断基準も明確になっていない限り確認した人の感覚で決めてしまう事になるのです(これが判断)。

つまり経験値が少ない作業者に「判断」を求めるから種々のトラブルが発生するわけで、作業者が「作業」のみをやっていればトラブルは発生しないわけです(作業の中に含まれる「判断」を徹底的に排除することが必要)。

ただそれでは仕事が回らない、派遣社員や外国人にもある程度の「判断」はしてもらいたいという場合には、「判断」ではなく「判定」を行わせることが必要です。「判定」とは基準に沿ってYesかNoを決めることですが、「○○よりも高い」とか「低い」など最低限の理解力があれば誰でも同じ結論に到達できる内容であることが大切なのです。

つまり、「作業」と「判断」を明確に分離することが必要で、どうしても判断的な動きをやってもらいたいときには「判断」ではなく「判定」をやってもらうようにすることが必要なのです。

今回は派遣社員外国人労働者を例にして話をしましたが、これは決してこれらの人の能力が低いという事ではありません。当然ながら非常に能力が高く「判断」を全く問題なく行える人もいますし、日本人正社員で「判断」が出来ない人も結構いたりします。あくまでも1つの例として考えてもらえればと思います。

日本が経済成長できなかった理由

前々回に「長い目で見れば円安は喜ぶべき事」という記事を書きましたが、それについて少し捕捉したいと思います。

下記のグラフはドルに対する為替レートの推移(約40年間)を示したものですが、このグラフを見て何が解るかというと、為替レートと日本の経済成長(GDP)の伸び率は強い相関関係があるという事です。

為替レート推移(出典:世界経済のネタ帳)

日本の高度成長は80年代で終了し、90年代はバブル崩壊から低経済成長の時代に入りましたが、まさにこれとリンクするのが為替レートなんですね。その後日本は30年に渡って経済成長できない時代が続いていますが、その間の為替レートは100~110円くらいの間を推移しています。その中でも民主党政権時(2009~2012年)は80円を切るレベルまで円高が進みましたから、この時に多くの製造業が海外に工場を移転したのは記憶に新しい所ではないでしょうか。

前回も話をしたように円高が進むと日本で作るよりも海外で作ったものを輸入した方が安くなりますから、必然的に製造業は海外に移転していくわけです。その結果日本国内のGDPは減少しますから、不景気になり賃金水準は下がっていくわけです。そうなると国民の購買力は下がりますから、より安い海外産品を買うようになり国内の製造業はさらに低迷して行くわけです。さらに日本ではこの間に派遣社員の増加や外国人労働者の増加がありましたから、余計に賃金水準の低下を加速して行ったわけです。

それでは円安や円高はどうやって決まるのかという事ですが、超簡単に説明すると日本とアメリカの通貨発行量の差によって決まります(諸説あり)。要はドルが増えてドルの価値(希少性)が低下するとドルは下がります。この時に日本の円の通貨量が同じだったら、日本の円の方が希少性が上がりますから、円高になるという事です。そしてこのような状態が30年続いてきたわけです。

つまり日本の円高は日銀や財務省通貨供給量を増やさない(国債の発行を抑え込んだ)ことが大きな原因であったのは間違いないと思います(あくまでも私の考えです)。逆に言うと国債発行量を増やして円安誘導し、国債で得た資金を地熱発電省エネルギー技術などに投資すればエネルギーコストは大きく下がるので、円安に伴う物価上昇に一定の歯止めをかけつつ経済成長できるのではないかと思います。

まあ個人的なイメージですが、現在の日本の経済力から考えると130~140円が適切な為替レートではないかと思いますから、今の為替レートは「わたし的」には適正なんじゃないかと思っています。

20周年記念式典!

(株)アステックコンサルティング 設立20周年記念式典を開催しました。

 

本来は昨年の9月に行うはずだったのですが、コロナの関係で本年5月になってしまいました。本当にコロナには泣かされますね。

開催場所はルミナス神戸(観光船)で、神戸港を出港して明石海峡大橋の下をくぐって神戸港に戻ってくるというクルーズの中で開催しました(専用のルームを確保!)。15周年記念式典もルミナス神戸で行いましたから、前回に引き続き船上での開催という事になりました。

 

20周年記念式典

まあ、20年という年数を考えると色々な事がありましたが、基本的にはお客様に恵まれ、社員に恵まれてここまでこれたんじゃないかなと思っています。

これからは、これまでの20年よりもはるかに激しい変化が起こるのは間違いありませんから、気を引きしめてコンサルティング業に励んで行きたいと思っています。

今後も10年、20年とご引き立て賜りますように、よろしくお願いします。

円安は喜ぶべきか、悲しむべきか

今年のゴールデンウィークは久々に行動制限のない長期連休となりました。欧米を中心にコロナに対する制限を解除している国も増えましたから、久々に海外旅行を楽しんでいる人も多いようです。

ただそこで問題になっているのは円安ですね。実は円安・円高の影響を最もストレートに受けるのは海外に行くときですから、今回の急な円安は海外旅行先で使えるお金が減ることになりますから、困った人も多かったんじゃないかと思います。

今回の円安は結構大きな変化で、1ドルー130円を超えるレベルになってきています。これまでは110円程度でしたから、一気に20円の円安(約18%)になっている感じです。

ここで考えないといけないのは、円安は喜ぶべき事なのか、それとも悲しむべき事なのかという事です。何となくテレビなどの主張を見ていると円安は悪いもの、特に今回の円安は悪い円安だ、と言っているように感じますが、本当でしょうか?

基本的に円安や円高という為替レートは対象となる通貨の価値の差によって発生します。現在アメリカは非常に景気が良くてインフレも急速に進んでいますから、アメリカ政府は金利を上げて過剰な景気の過熱を抑えようとしているわけです。

逆に日本は相変わらずのデフレ基調で、ここに来てやっと輸入品ベースの価格が上がってきている状態です。当然ながら相変わらずのゼロ金利状態です。このような状態だと日本の円に投資するよりも、アメリカのドルに投資した方がリターンが大きくなるのは明白ですから、多くの人がドルに対して投資するのでドル高・円安になるわけです。

今までの為替レートでは110円で1ドル相当の物が買えたのに、現在は130円出さないと1ドル相当の物が買えなくなっているわけですから、当然ながら輸入品の価格が上がってしまうという事になります。実際に食品や家庭用品企業が値上げに踏み切っていますし、全般的な物価上昇が発生している感じです。

ただ今回の輸入品の価格上昇は単純な為替レートの違いによるものではなく、ウクライナの戦争の影響や上海のロックダウンによる物流の停滞などの影響もかなり強いのは事実ですから、単純な話ではありません。

話を為替レートの戻しますが、一般論としては輸出型企業にとっては円安は喜ぶべき事ですし、国内販売型企業にとっては悲しむべき事という事になります。つまり企業単位で考えるとその企業の特性によって変わってきますから、考えるならば日本という国としてはメリットがあるのか、ないのかという事になります。

話が長くなるので結論を先に言うと、円安は短期的視点(数か月単位)ではデメリットが多いが、長期的視点(年の単位)ではメリットが大きいという事になります。短期的な円安は購入品価格が上がって家計支出が増えるだけですから、デメリットが大きいんですが、円安が一定期間続くと日本国内の社会的構造が少しずつ変わってきますから、最終的にはメリットが大きくなるという事です。

これを少し詳しく解説すると、国内で物を作っている企業においては輸入品の価格が高くなると、日本の国内産のものを使おうという動機が生まれます。そもそも価格が安いから輸入品の材料を使っていたわけですから、国内品との価格差が少なくなったら国産品を使うのは当然の流れという事になります。そうなると今まで海外産品に市場を取られていた国内企業の仕事が復活するわけですから、日本国内の景気も回復し始めるという事になります。

また多くの企業が海外に工場を作っていますが、その理由の一つは国内で作るよりも海外子会社で作ったものを輸入した方が安かったからそうしたわけで、国内で作った方が安いのならば、海外工場の生産を日本の工場にシフトするわけです。そうなると国内の生産高が増えるのに加えて人員不足が起こりますから、賃金も上昇傾向になるわけです。

かつて民主党政権の時には急激な円高が起こりました(政策的にそうしていた)が、その時は国内生産をあきらめて海外に進出する企業が非常に多かったのを記憶している人は多いのではないでしょうか。その時はマスコミを含めて円高で輸入品が安くなったので、国民生活は楽になったと煽っていましたが、その結果国内産業の空洞化が起こって長期のデフレ(物価も下がるが、賃金レベルはそれ以上に下がる)に陥り、日本が全く経済成長できない下地を作ったわけです。

そういう意味から考えると、日本としては現在の円安は喜ぶべきことで、短期的に物価上昇に耐える必要はありますが、これが1年以上続くようになれば日本の産業構造に変化が現れ、国内需要をベースにした賃金上昇につながり、経済は好転して行く事になると思います。

つまり、円安は短期的に終わってしまうのならば悲しむ事ですが、ある程度長期的に続くのならば喜ぶべきことと言えるでしょう。これでやっと日本経済が回復しだすのではないかと期待しています。

1次情報に触れられる環境を作る

前回のブログで1次情報、2次情報、3次情報の考え方、部下からの報告の受け取り方について書きましたが、今回もこの情報について書きたいと思っています。

前回のおさらいになりますが、1次情報とはいわゆる生データのことで現場で発生している事実そのものという事になります。一般的な製造メーカーであれば、誰が、どれくらいの時間をかけて、何を、いくつ作ったのか、という事実情報が1次情報ですし、設備が何時間稼働したのか、チョコ停は何回あったのか、段取り替えに何分かかったのか、などの事実情報も1次情報という事になります。この1次情報の特徴としては非常に数が多いという事で、細かく分けて行けば無限に近い種類の情報が発生するという事になります。そのため1次情報はしっかりとした目的をもって収集しないと必要とする情報が抜けていたり、不完全な状態でのデータを収集することになりますから注意が必要なのです。

2次情報はこの1次情報を取りまとめたもので、情報を必要とする人が分かり易くなるようにデータの種類を選択したり、グラフ化などを行って直感的に発生している状況を理解できるようにした情報のことです。当然ながら人によって必要とする情報は違いますから、利用する人ごとに2次情報は出来ることになります。つまりこの2次情報の段階から人の意図が入って来るという事になります。

3次情報は1次情報、2次情報を基に作成者の意図に沿ってデータを選別し、解説なども加えて作成された文書のことであり、一定の方向性(作成者の意図)をもって作成されているものです。

これら1・2・3次情報は分かり易くマスコミに例えることが出来ます。一般的に1次情報というのはツイッターや各SNSのように「特定の現象」を見た人がその場で発信した情報であり、まさに事実を客観的に発信した情報という事が出来ます。

それに対して2次情報はテレビやラジオなどの媒体であって、数ある1次情報の中から一定の意図をもって情報を選別し伝達することになります。当然ながら編集作業を行う段階で編集者の意図が強く反映されることになりますし、その意図に沿って情報を選別することが発生するわけです。

3次情報は新聞や雑誌、テレビであっても明確な方針のもとに編集された番組は3次情報という事になります。当然ながら情報の取捨選択には強い意思が働くことになります。

現在マスコミ離れであるとかテレビの視聴率が下がっていると言われますが、その最も大きな原因は一般人が1次情報に触れられるようになってきたからという事が出来ます。以前は2次情報や3次情報でしか事件や各出来事を知ることは出来ませんでしたから、それらを当然のように信用していたわけです。ただ現在は多くの人々がネットなどを通して直接1次情報に触れられるようになったために編集者の意図を排除して事実を知ることが出来るようになったのです。これらの結果としてテレビの視聴率は大きく下がり、新聞などは頭から信用しなくなった人が出てきているわけです(私もそうですが)。

残念ながら1次情報に触れることが出来ない世代や人々は未だにテレビや新聞の情報が正しいと思っているわけですが、これら人の比率は徐々に低下して行くのは間違いありませんから今後もテレビや新聞の凋落は進んで行くのは間違いないでしょう。

実はこの事を通して読者の皆さんに伝えたいのは、会社内でも同じようなことが発生していませんかという事です。これは特に中間管理職や上級管理職に対して言いたいのですが、報告書やレポートを読むだけでは「起こっている事」の全体像を正しく理解できないですよ、という事です。正しく発生している問題を理解するためには1次情報に触れることが非常に大切なわけです。これは各工場の隅々まで回れという事ではなく「自分から1次情報に触れに行かなければ正しい判断は下せませんよ」という事なのです。

一時期、品質の偽装とかの問題が発生しましたが、これらの背景には1次情報に触れようとしない上級管理職の存在があったのは間違いないと思います。

ですから会社が大きくなればなるほど上級管理職や役員などは1次情報に触れる努力を行うべきですし、不要な階層を排除し組織のフラット化を行う事によって1次情報に触れられる組織環境を作っていくべきなのです。そしてこれらを側面的にバックアップするのがDX化という事が出来るのです。

 

部下からの報告の受け取り方

今日は情報の種類について話をしたいと思います。

皆さんは情報には1次情報、2次情報、3次情報があることはご存じでしょうか。

これらは具体的に発生している事実からの距離を示しているもので、1次情報は具体的に発生している事実情報であり、製造現場で言えばその時々の生産数量や設備の稼働時間、作業にかかっている人員数など現場で実際に発生している現象を示す数値という事になります。他にも営業系の情報であれば顧客別の売り上げ数量もそうですし、営業担当が顧客と面談した時の営業日報などが1次情報に当たります。他にも1次情報は具体的な事実ですから色々なものが存在することになります。

2次情報は1次情報を伝達するために分かり易く加工した情報のことを指します。先の生産の例であれば、設備別の出来高をグラフ化して見やすく加工した情報や日々の生産性を数値化して比較しやすくした生産性指標の数値なども2次情報という事が出来ます。

これに対して3次情報は1次情報、2次情報をベースにしながらも作成者の意図を加えた情報のことを指します。一般的には報告書やレポートなどは作成者の意図を反映させて作成されるもので、作成者の思考力や分析力によって内容は大きく変わるので報告を受け取る側の管理者は注意が必要なのです(同じデータであっても全く正反対の結論を導き出す場合もある)。

マーケティングで良く出されるたとえ話としてアフリカに靴を売りに行ったセールスマンの話があります。2人のセールスマンのミッションは実際にアフリカに行って靴がどれくらい売れる可能性があるのか、会社としてアフリカに投資する必要性があるのかを判断して本社に報告することです。そして2人が実際にアフリカに行ってみると「靴を履いている人はほとんどいない」という現実があったわけです。全くゼロではありませんが、ほとんどの人は「はだし」で歩いていたわけです。この事実を見て2人のセールスマンが本社に送った報告は以下の通りです。

1.Aさんは本社に対して「靴を履いている人はほとんどいない。はだしで歩いている人も特に困ったようには見えない。だからアフリカで靴は売れないので進出しない方が良い」という報告をしたわけです。

それに対してBさんは「靴を履いている人はほとんどいない。でも今後所得が増えるにつれて靴の需要は必ず高まるので、本格的に進出すべきだ」という報告を上げたわけです。

このように3次情報はその情報を捉える人によって解釈が大きく変わる可能性が高いので、情報を受け取る側が注意をする必要があるのです。まあこの事が何を意味するかというと、3次情報を鵜呑みにするのではなく1次情報に触れることが大切であるという事です。この例で言うと「数少ない靴を履いている人はどんな人か」「そもそも靴を売っている店はどこにあるのか」「靴を履くメリットが得られる凸凹道がどれくらいあるのか」というような1次情報に数多く触れればふれるほど間違いのない判断を下せるようになるのです。

管理者と呼ばれる人はどうしても部下からの報告を聞いて判断を行う事になりますが、そこで大切なのは1次情報をしっかりと確認することです。1次情報を確認することが出来ない場合でも、取りまとめた2次情報を確認することが非常に重要です。そしてそれらの情報を基に報告者が3次情報として出した結論を導き出すまでのプロセスを確認すること(ロジックの妥当性の確認)が正しい判断を行うためには絶対必要なのです。

今回は報告を受け取る時のポイントを記しましたが、今後も折に触れてマネジメントの在り方についても情報発信して行きたいと思います。

フローコストという考え方

今回は「フローコスト」という概念について説明したいと思います。

このフローコストは先日出版した「「見えないコスト」削減!」の中でも言及している基本的な概念の1つという事が出来ます。一般的に原価計算を行う場合に人件費は部署別にまとめられるか、製品別にまとめられるかされる場合がほとんどですが、残念ながらこの分類方法ではコストの発生原因を明確に分析することは出来ませんし、明確なコスト低減プランを作成することは出来ません。基本的にこれらのコストの分類方法は総論型であって、実際にコストが発生している現場を特定することが出来ないのです。

それに対してフローコストという概念は、業務フロー単位でコストを集計していく事になります。つまり特定業務における仕事の流れ(フロー)を明確にした上で、その業務に携わっている人すべての作業時間や待ち時間などを集計して、業務フロー単位で発生しているコストを集計する方法です。特に単独部門内で完結せずに複数部門にわたって仕事を進めないといけない業務においては、従来型のコスト計算では明確に把握することが困難だった実コストを正しく把握することが可能になるわけです。当然ながら業務フロー単位でのコストが把握できれば、そのフローのどこを改善すればコストが下がるのかを把握することが出来ますから、改善が行いやすくなるわけです。

ただこのフローコスト分析を行っていく場合には「業務価値」という概念が非常に重要になります。要は業務フローごとに付加価値を設定して、その付加価値に見合ったコスト(作業時間)で業務を行っているのか、それとも得られるであろう付加価値に対して過剰に時間をかけすぎているのかを判定して行くわけです。当然ながら得られる付加価値よりもコスト(作業時間)の方が多ければ改善対象になるわけです。

そしてフローごとの価値を算定するために必要になるのが、業務機能設計という事になります。業務機能設計とは自分たちの部門の業務の目的と機能を設計する手法であり、自分たちの部門の存在目的から考えて本来自分たちが行うべき仕事は何なのかをしっかりと定義する方法です。多くの場合自分たちの部門の目的と実際に行っている業務は100%合致していることは無く、本来の目的よりも過剰に時間をかけてやっている業務があったり、本来やらなければいけない仕事が出来ていない、自分の目的に合致しない仕事を行っている、などと言った場合が多いのです。そのため業務機能に合致した仕事の付加価値は高く、合致しない仕事の付加価値は低く設定することになります。

少し説明が難しくなったかもしれませんが、まあ分かり易く言うと業務フロー分析をきっちりとやって、そのフローの各部分においてどれだけのコスト(作業時間)が発生したのかを記録し、業務価値から換算してそのコスト(時間)が適正なものなのか、必要以上に時間をかけすぎているのかを判別するわけです。そして必要以上にコスト(時間)がかかっているならば、フローを短縮することによって発生するコスト(時間)の削減を行っていくのです。

このフローコストの考え方は、間接部門や開発・設計部門だけではなく製造部門においても活用していくべき考え方です。製造部門で活用する場合は生産フロー上の各工程の加工時間とそれによって生まれる付加価値によって判定することになりますが、「加工価値」を考えることによって今までとは違った視点で改善を進めることが可能になってきますから、ぜひ活用して行ってほしいと思います。