イーロン・マスク

前回まで8月に実施した公開セミナー「収益改善7つの切り口」の解説を行ってきましたが、それについては前回で終了です。また来年2月に公開セミナーを行う予定にしているので、セミナー実施後はまた解説を行っていきたいと思います。ちなみに次回の公開セミナーのタイトルは「生産性向上7つ道具」で、現在の製造業における生産性向上の切り口について解説していく予定です(かなり多岐に渡った取り組みの紹介になると思います)。

今日は最近話題になっている「Twitter」の話題について話をしていきたいと思います。

イーロン・マスクが6兆円を超える巨費を投じて買収したTwitterですが、最近は社員の半分をリストラしたり、更にハードワークを拒否するものは解雇など話題を振りまいています。

現状では社員数は買収前の1/3になったようですが、イーロン・マスクは涼しい顔をしていますね。新聞やテレビなどの旧来型のマスコミは「技術者がこれだけ抜けたら運営できない」とか「倒産させるのが目的ではないか」「金持ちの遊び」などと揶揄していますが、実際のところイーロン・マスクは全て織り込み済みで動いているように感じます。

従業員のリストラについても、解雇された人たちは本当に技術者なの?という疑問がわきますね。何となくポリコレ(ポリティカル・コレクトネス:差別や偏見を取り除く)の要求に沿って投稿内容を監視したり、ユーザーの発言傾向を見てアカウントを停止したりなど、Twitterの運営面にかかわっている人が中心で、技術者の退職は少ないんじゃないかと思います。

現在のアメリカではポリコレが全盛で、何でもかんでもポリコレの考え方に沿っていないと批判の嵐にさらされますから、企業もポリコレ対策に相当のコストをかけているようです(私的にはハリウッド映画が面白くなくなったのもこのせいじゃないかと思っています)。そもそもポリコレ自体がマルクス・レーニン主義の中で使われてきた言葉らしいので、左翼主義的になっているアメリカにとっては馴染みやすい言葉なのかもしれません。

話を戻すと、イーロン・マスクツイッターを高収益企業に作り替える自信があるから買収したんだろうと思っています(かなり真剣に)。現在のアメリカは政治主義的にポリコレを中心とした左翼主義(民主党)と共和党を中心とした右翼系の人々に二極分化しているように感じられますが、実際にはそのどちらでもない人々(普通の人々)が相当数いるんじゃないかと思います。

今までツイッターはどちらかと言うと左翼主義的なメディアになっていましたから、これを中道的な位置づけに引き戻せれば利用者数はかなり増えるんじゃないかと思います。またTiktokのような動画配信機能を追加する話もしていますから、使用者の年齢層も幅広くなって、使用者数は激増する可能性があるんじゃないかと思います。

つまりTwitterの立ち位置を変えることと新たなサービスを追加すれば現在3~4億人と言われているアクティブユーザー数を倍増させることが可能であると踏んでいるんじゃないでしょうか。そうなれば当然広告収入も増えますから、高収益企業に転換することは間違い無しですね。

まあ知名度の割にはアクティブユーザー数が少ないのがTwitterの欠点だったわけですから、本当に自由な空間を提供できるようになれば間違いなく成長すると思います。今回の買収に関してメディアが相当(否定的に)報道していますが、実際はものすごい宣伝効果になっていると思います。

私的にはTwitterは「買い」ですね。ただ上場廃止になっていますからもう買うことはできませんが、心情的には「大幅な買い」ですね。大きく成長することを期待しています。

従業員教育の重要性

今回は「収益改善7つの切り口」の7番目、最後の切り口について話をしていきたいと思います。

7つ目の切り口は「従業員教育の進め方」です。

実はセミナーを実施した後のアンケートにおいて、7つの切り口のうち最も評価が高かった項目、最も参考になったという項目がこの「従業員教育の進め方」です。

多くの企業で従業員教育は進めていると思いますが、その質と量は20年前、30年前と比べると確実に低下してきているように感じます。特に製造部門における教育は確実に低下してきているように感じます。その最も大きな要因は企業が従業員教育に投資をしなくなったという点にあると思いますが、加えて製造部門における従業員が正社員から派遣や請負、技能実習生に変わってきた点にあると思います。

基本的に派遣や請負は自社の従業員ではありませんし、技能実習生も数年たてば人が入れ替わるわけですから、そこに教育投資を行おうと思わないのは当然かもしれませんが、その結果として製造現場における教育水準は確実に低下しているのです。

これらの結果として工場内のトラブルの数が増えたり、故障などでも自分たちで修理することが出来ずに、ちょっとした部品交換まで設備メーカーに依頼する、場合によっては設備の異常に気付かずに設備が壊れるまで使い続けて、結果的に長期間の設備停止や生産能力の低下に陥っている企業は結構多いのです。

まあ本来は20・30年前のように製造現場も正社員のみで運用できるようすれば良いのかもしれませんが、現実的には無理なところが多いと思うので、今いる人員に対する教育をやっていく必要があるのではないかと思います(現在は全国的に人手不足になっているので、結果的に正社員比率が上がるかもしれない)。

実際に教育を行っていく場合に大切なのは、KnowHow教育だけでなくKnowWhy教育を進めていくことです。KnowHow教育とは文字通り「作業のやり方」を教えていく教育で作業標準に沿って作業のやり方を教えていく方法です。それに対してKnowWhy教育とはWhyの部分、作業の意味や目的、なぜその作業を行う必要があるのか、その作業に不具合があったらどんな影響が出るのかなど、背景や周辺知識も含めて教育していく方法です。

当然ながらKnowWhy教育には時間と手間がかかりますが、作業者自身が「考えて」仕事を進めていくことになるので、異常発生時の対応や不良発生時の対応などに大きな差が出てくるため、結果的に「高い生産性で、効率的に」生産していくことが可能になるのです。当然ながら教育を行っていく場合には初歩の基礎レベルの教育から初めて、徐々にレベルの高い教育を行っていく事になります。

添付の図にも書いていますが、本来教育とは「判断を行うためのモノサシ作り」であり、材料の色やにおいに問題はないか、設備の音に異常はないか、今日の製品と昨日の製品に違いはないか、もっと楽に作業できる方法はないかなど、作業標準類には記載できないような項目についても作業者が判断して、異常があればすぐに上司に報告して判断を仰ぐことによってトラブルを未然に防ぎ、工場の恒常性を保つ、そのための取り組みなのです。

つまり従業員教育レベルが高い企業においてトラブルは発生しにくくなりますし、発生しても短時間で収拾することが出来るのです。その結果ムダなコストは発生しなくなりますから、収益力も向上することになるのです。

上記の説明が教育が必要な理由の全てではありませんが、教育効果を前面に出して生産活動を行っていくのが日本企業の特徴ではないのかなと思います。欧米の企業のように作業者と管理者を明確に分けて、作業者にはただ作業をさせる、考えることはさせない。管理者は部門運営に明確な責任を持ち、生産性を上げたりすればその結果に見合う報酬を得ることが出来るというスタイルとは明らかに違うんじゃないかと思います。

どちらが良いかは製造環境や地域環境も違うので、一概に判断することはできませんが、私的にはもう一度日本的なやり方が復活してくれたらうれしいと思っています。

欧米的な作業管理や教育については、また別の機会に書きたいと思います。

 

フローコスト

ここのところ8月に行った公開セミナー「収益改善7つの切り口」の解説を行っていますが、今回は6つ目の切り口「フローコスト」について説明していきます。

今まで”見えないコスト”を含めてコストの新しい見方について解説してきましたが、フローコストもその中の1つで、コストは部門単位で発生するのではなく業務フロー(仕事の流れ)単位で発生すると言う事です。

一般的に労務費は部門単位で集計することがほとんどで、生産管理部門や調達部門、総務、経理など職制単位で取りまとめます。そのためコストダウン活動を行う場合でも労務費の削減は目標金額を部門単位に割り付けて改善を進めていくことになります。

しかし、実際のコストは部門単位で発生しているのではなく、業務フローごとに発生しているのです。例えば生産計画を立案するコストは生産管理部門だけで発生しているのではなく、生産部門や調達部門においても一定の工数は発生しているわけです。そのため本来のコストを算出しようと思ったら、それらの部門のコストも足し合わせていく必要があるのです。そのように仕事の単位、業務フロー単位で集計したコストの事をフローコストと呼ぶのです。

フローコスト

特に先の生産計画の例のように、複数部門が関与するような仕事では従来の部門単位のコストでは現実を正しく見ることが出来ないので、フローコストと言う視点で見ていく必要があるのです。

図表の例は外注加工依頼作成にかかわる業務フローを表したものですが、外注加工依頼コストは調達部門だけで発生するのではなく、生産管理部門や製造部門でもかなりの工数がかかっているのが解ると思います。流れから行くと、まず生産管理部門が作った計画を生産部門に伝達する作業が発生しますし、生産部門では生産計画通りに作れるかどうかの能力調査を行うことになります。その能力調査が終われば結果を係長や課長に伝達することになります。その上で能力が不足するようならば調達部門に外注加工以来を出すことになりますし、調達部門は加工以来が出来る外注先を探して発注することになります。当然ながら発注時にはコスト交渉も必要になってきますし、納期交渉も必要になってきます。この様に外注加工以来と言う業務だけでも複数の部門や人を経由することによっていろいろな部署でコストが発生するのです。

このフローコストはコストの発生源を明確に特定することが出来る手法であり、コスト分析においては非常に有用な方法と言うことが出来ます。更にこのフローコストを詳細に分析するためにはフローコスト分析という手法があります。このフローコスト分析はコストの発生状況を時系列的に把握する方法で、縦軸に業務処理に関与する部門や人を入れ、横軸に材料費や経費、直接人件費や間接人件費などを入れることによって1つの製品が完成するまでにどこでどれだけのコストが発生するのかを客観的に見れるようにする手法です。このフローコスト分析を行うと今まで見ることのできなかったコストの発生状況を細かく見ることが出来るようになるので、改善ターゲットを見つけやすく、結果も客観的に知ることが出来るので非常に有用な方法と言うことが出来るのです。

今回はフローコストと言う考え方について書かせてもらいました。この考え方は間接部門でも、直接部門でも使える考え方であり、コストは時系列と業務フローの中で発生するものであると言う事をしっかりと理解してもらえれば幸いです。

従来のコストダウン活動では成果が出なくなった、新たにやるべきことが見つからないという人は、このフローコストの考え方をベースに改善に取り組んでいってほしいと思います。

キーワードは「より早く」「より単純に」ですから、お忘れなきように!

 

間に合わせるために発生するコスト

秋が急激に深まってきていますね。テレビやネットなどでも紅葉(こうよう)の話題が増えてきています。紅葉は主として落葉広葉樹が葉を落とす際に現れる現象で、葉の中に含まれる葉緑素が分解吸収された結果、もともとの葉に隠れていたカロチノイドが目立つようになってくる場合を黄葉、葉を落とす前にアントシアニンが形成された結果、葉が赤くなるのを紅葉と言います。実際には紅葉・黄葉に加えて褐葉(タンニンの増加による)もありますが、褐葉は美しくないので(枯れ葉色)、紅葉や黄葉に目が行ってしまうことになりますね。

前々回に引き続き、今回は収益改善7つの切り口の5番目「調達フローの問題点」について書いて行きたいと思います。

調達フローにおける問題点は一般的に納期管理、コスト管理、品質管理の3つの問題が中心になりますが、発生した現象面から考えていくと「間に合わせるために発生するコスト」が調達面におけるコストアップの極めて大きな要因であることを知っておく必要があります。

通常、製造業において最も避けなければならないのは「納期遅れ」を発生させることです。当然ながら納期遅れを発生させると取引先は激しく怒ることになりますし、自動車産業などでは納入先のラインを停めたら損害賠償を請求されることにもつながります。そのため、多くの製造業では納期遅れを出さないことを最優先に仕事を進めていくことになりますし、多少のコストは犠牲にしてでも「納期を守る」ことを優先してしまう事になるのです。

この納期最優先の考え方から生まれるのが「間に合わせるために発生するコスト」と言う事になります。そしてこの「間に合わせるためのコスト」は、まさに見えないコストであり明確に金額換算できませんが(金額換算できる部分もある)、かなり大きいことは明らかです。

間に合わせるためのコスト

具体的に発生する「間に合わせるためのコスト」として代表的なものとしては、以下のものがあります。

まず物流時間を少しでも短縮させるために、航空便や宅急便、専用便を仕立てるなどは非常によく使われている例です。要は納入日を数日を短縮するために大きな配送費アップが発生することを許容するわけです。

また、外注先に納期変更をしょっちゅう依頼している企業では、外注先もそうなることは分かっていますから、最初から特急対応の値段込みで見積もりを出すことになります。当然ながら資材部門は少々高くても納期に間に合わせてくれる外注先のほうがありがたいですから、値段が高くても買ってくれるわけです。

そして納期遅れがクレームにつながる例も数多くあります。普段から納期遅れが多発している企業では、製品組立時に欠品している部品だけを除いて組み立てられるところは出来るだけ早めに組み立てておく場合があります。そして欠品部品が来た段階でそれを取り付けて出荷するという形を取ろうとするのですが、結局ねじの締め忘れや部品の取り付けミス、欠品部品以外の部品の取付忘れなど、顧客に納品してから指摘されるクレームが続発してしまうことが多いのです。

この様に「間に合わせるコスト」は多くの企業で発生しているのですが、このコストを本格的に削減しようとしている企業はそれほど多くありません。どちらかと言うと必要悪(多少コストが上がっても欠品するよりはマシ)という捉え方をしているところが多いんじゃないかと思います。

この「間に合わせるためのコスト」は決して調達部門だけの責任ではありませんが、どうしても矢面に立つのが調達ですから、「調達部門はもっと頑張れよ」と言う事になってしまうのです。

この様に「見えないコスト」は社内の色々な所にはびこっています。納期に間に合わせるという正義のために発生するコストだから”止む無し”と考えるのか、本来のあるべき姿と比較して”変えるべき”と思うのかが企業収益アップの分かれ目になるんじゃないかと思います。

簡単に解決する課題ではありませんが、「必ず解決する」という強い気持ちは持ち続けてもらいたいと思います。

ちょっと時事話題

台風通過後、一気に秋になりました。タンスから長袖を引っ張り出して着ている今日この頃です。

世界も混沌度にさらに拍車がかかった感じがします。ウクライナが領地奪還するのは、それはそれで応援したいのですが、同時に「核」投入のカウントダウンが進んでしまう気もしますから、非常に複雑な気分です。

仮にロシアが核を投入してもNATOアメリカが報復核攻撃するかと言うと、その可能性は低いような気がします(核で報復すれま全面的な核戦争になる)。たぶん通常兵器でロシア軍部隊を集中攻撃するか、クリミアの黒海艦隊を壊滅させる形になりそうな気がします。加えて国連からの追放程度で終わるんじゃないかと思っています。

このまま秋が深まって気温が低下して来ると暖房需要が高まりますが、ヨーロッパのエネルギーのかなりの部分を担っているのがロシアの天然ガスですから、ロシアがその供給に制限をかけるようになるとEU諸国は途端にエネルギー不足に陥りますから、ロシアに対して強硬策を取れなくなってくるのは明白ですね。その結果、ウクライナに対する武器供給が減少し、再びロシアが優勢になってくるように感じます。

そのため、ウクライナが優勢になっている今こそ(核を打つ前)が停戦の時期だと思うのですが、どうでしょうか。このまま冬になれば、それこそロシアの思うつぼになるんじゃないかと思います。

今回のウクライナ戦争はもう少し長い視点で見ることが大切だと思います。少なくともEU諸国がロシアのエネルギーや資源、食料等に依存しない状況を作り上げてから、ロシアに対峙しないと、ロシアを追い詰めることはできないんじゃないかと思います。

この世界情勢に絡む話として、日本の円安はいつまで続くのかと言う話も大切ですね。現在の状況を見ると日本の円が2020年くらいからドルに対しても、ユーロ、オーストラリアドル、ポンド、元に対してかなり安くなっている状況です。直近の円安はアメリカの景気に左右されてしまった感が強いですが、少し長い視点で見ると円の実力がこれくらいであると言う事を示しているんじゃないでしょうか。つまり今の日本の円の実力は135~140円程度であって、今までが必要以上の円高になっていたんじゃないかと思います(異論はたくさんあると思いますが・・)。

まあ、この推測から考えると、今後も今の状況が当面続くんじゃないかと思います。つまり今は円安ではなく、今までが円高であってやっと回復してきたという感じですね。

この円安が続くと間違いなく国内の製造業は活性化してきますし、景気も回復してくると思います。今まで海外に出ていた工場が国内回帰するニュースも最近よく聞くようになってきましたし、脱中国の動きと相まって国内に仕事が舞い戻ってくるだろうと期待しているところです。

そうなってくると発生するのが労働力の不足です。もうすでに国内の労働者不足はかなり深刻化してきていますが、ここで手をこまねいていたら再び海外へ工場が移転していくことになります(労働力不足での海外進出)。政府はそれを見越して外国人労働者をたくさん入れようとしていますが、円安状態では外国人の賃金も実質目減りすることになりますから、本当に日本にたくさん来るかどうかは未知数ですね。外国人労働者視点で見れば、日本で働くよりもオーストラリアやタイで働いたほうが実質の手取りは増える可能性が高いわけですから、わざわざ日本に来てくれるかどうかは未知数ですね。

そのため今後日本の製造業で必要なのは抜本的な生産性の向上だと思います。DXや省人化設備の導入は当然のこととして、社内のビジネスフローを改善してムダが出ない仕組みを作っていく必要があるのは間違いないでしょう。

このあたりの話はアステックコンサルティングセミナー等で色々と話していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。また近いうちにアーカイブセミナーとして、過去の技術セミナーや工場長セミナーなどを「いつでも・どこでも」見られるオンデマンド化する予定ですので、オンデマンド化したらご参加のほどよろしくお願いします。

今回は今までシリーズで話してきた「収益改善 7つの切り口」から離れて、最近感じることを書かせてもらいました。今後はまた上記シリーズに戻ろうと思いますので、よろしくお願いします。

総枠型人員管理とは?

日も少しづつ短くなり、すっかり秋めいてきました。朝晩の気温も下がり始め、比較的過ごしやすい気候になってきたように感じます。

いつもこの時期は彼岸花が突然花をつけて、こんな所になぜ?いつの間に?と思ってしまうことがよくあります。まあ球根を持つ植物ですから、毎年同じところに咲くんですが、1年前のことは忘れていることが多いので、突然咲いたように感じてしまうんですね。

今日は「コストダウン7つの切り口」の中から、「総枠型人員管理」の話をしたいと思います。

製造業において各職場で働く人員数を決めるのはかなり大きな関心事である反面、明確な基準を持っている企業はそれほど多くないのではないかと思います。実際に多くの企業では係単位や職場単位で人員の定数が決まっている場合がほとんどで、生産量が多い場合も、少ない場合も職場内の総人員数は変わらない場合がほとんどです。部署間の応援体制を取っているところも多いと思いますが、その場合でも工場全体の総人員数はほとんど変わらないわけです(積上げ型人員管理)。

それに対して総枠型人員管理は仕事の総量から総人員数を決めて、各職場の負荷に応じて人員を配布していくスタイルを取っていきます。緻密な生産計画をもとに工場全体や各職場の負荷を算出し、その負荷量に応じて人員数を決めていくわけです。同じ職場であっても負荷量が変われば人員数が変わるという形になるわけです。

この総枠型人員管理は特に仕事量の変動が多い企業や生産量がやや減少傾向の企業において大きな成果が出てきます。これらの企業では多くの場合、最も生産量が多い場合を想定して各部門の人員数を決めている場合が多いので、生産量が少ない時期には労働力が余ってしまうのですが、現場の係長や課長は忙しい時期が来るのが解ってますから、ヒマな時期だからと言って抱えている人員数を減らすことはできないのです。パート主体の工場ではそのような時期には勤務時間を6時間にしたり、4時間にしたりする場合もありますが、社員は忙しくてもヒマでも8時間勤務ですから、どうしても余剰時間、余剰人員を抱えてしまうことになるのです。

総枠型人員管理

これだけ聞くと「当社も総枠型人員管理」に変えようという声がすぐに聞こえてくるのですが、これを行うためにはそれなりの管理レベル、改善レベルが必要で、簡単にすぐ始められるわけではありません。結構難易度が高い取り組みも必要になるので、それを簡単に説明します。

まず必要なのは「工数負荷を正しく予想する」と言う事です。負荷が明確にならなければ配布する人員数を決められませんから、負荷予測は非常に重要なわけです。ただこの負荷予測を正しく行うためには、精度の高い生産計画が立てられること、標準工数だけでなく実際工数が正しく把握できること、現場での生産遅延要素(設備故障や品質不良など)が少ないことが上げられます。特にこの3つは総枠型人員管理を行うための基礎条件になりますから、それなりの精度で出来ていることが必要なのです。

また従業人の多能化レベルも高い必要があります。実際には「どこの職場に行くのか分からない」という話ではなく、「3,4か所の職場の中でローテーション」と言う形になる場合がほとんどですから、行く場所はだいたい決まるようになるのですが、それでも多能化を進める必要性は極めて高いのです。そして新人なども色々な職場に行く場合があるので、教育のための「作業の標準化」も非常に重要になります。特に大切なのは「作業」と「判断」を分離して、新人作業者には「作業」だけを行わせる仕組みを作ることです。多くの企業で作業標準書はあると思いますが、その多くは社員を前提にしたもので、作業と判断が明確に分類されていない場合が多いので、新人作業者が多い職場では一度見直して作業と判断の分離を置くなっていく必要があるでしょう。

これら以外にもリードタイムを短くして生産計画立案の自由度を上げる(前回説明した部分)とか、生産の進捗状況をリアルタイムで把握する取り組み、平準化を進めるための取り組みなどが必要になりますから、継続的な改善活動が必要になってくるのです。

この総枠型人員管理は、労務コストを管理する上で非常に大きな成果を出せる取組みですから、ぜひチャレンジしていってほしいと思います。仮にすぐに総枠型人員管理が出来なくても、それまでの改善の途上で色々な成果が出てくるのは間違いありませんから、積極的に取り組んでいってほしいと思います。

実際問題として総枠型人員管理を実施する場合には、コンサルティングを受けたほうが実現までの速度が大きく変わりますから、検討の中に入れておいてもらえたらと思います。

リードタイム短縮

今週は安倍元総理の国葬儀が行われますが、いったいどうなるんでしょうか。国葬儀に関しては賛否両論があるようですが、やると決まった以上はしっかりと対応してほしいと思っています。海外から首脳級の要人が多数参列する以上、日本として恥ずかしくない対応を行うべきではないかと思っています。国葬儀の当日にデモをやる人もいるみたいですが、ちょっと理解できないですね。きっと視野が狭すぎて周りが全く見えていないんじゃないかと心配してしまいます。

今回は「コストダウン7つの切り口」の3つ目、リードタイム短縮について書いて行きたいと思います。

今回説明したリードタイム短縮は主として製造リードタイム短縮で、製造における初工程から最終工程までの「モノ造り」のリードタイムを短縮しようと言う事です。

製造リードタイム短縮

製造リードタイムの短縮を行う場合は、まず製造リードタイムの内訳について知る必要があります。製造リードタイムは初工程の着手から最終工程の完了までの経過時間の事ですが、この内訳を考えると大きく二つに分けられます。1つは実際に加工や組み立てを行っている実作業時間と、2つ目は工程間で滞留している時間や加工待ち時間や組立待ち時間、仕掛状態で置いておかれている時間などの停滞時間です。

この2つの見方で製造リードタイムを分けると、実作業時間は5%程度であり、停滞時間が95%程度占めると言う事になります。こう聞くとこんなに停滞時間は長くないと思いがちなのですが、実際に計測してみるとこの程度なのです。特に一品受注型企業の場合は実作業時間の比率が1%以下の企業も結構あります。なかなか信じられないかもしれませんが、実際のST(標準時間)の合計と製造リードタイムの差を比べてみると良く分かると思います。

そのため製造リードタイム短縮を行う場合には、「停滞時間」を削減する取り組みが非常に重要なわけです。良く製造リードタイム短縮を行っている企業で、実作業時間の短縮を一生懸命やっている企業がありますが、残念ながらもともと5%程度しかない実作業時間を短縮しようとしてもその結果は「ほとんど効果なし」なのです。大切なのは「停滞時間」を短縮することであって、モノを停めずに流し続ける仕組みを作っていくことなのです。

更に製造リードタイムを工程別でみていくと理解しやすくなると思います(下の図)。工程別にみて行っても基本は同じであって、工程として与えられたリードタイムの中で本当にモノを加工している時間は非常に短いわけです。前工程からモノが流れてきてもすぐに加工するわけではありませんから、加工の順番が来るまで「停滞」させておくわけです。加工中においても1ロット全部を一度に加工できませんから、加工の順番が来るまで待たないといけないわけです(停滞)。更に加工終了後速やかに後工程に運ばれるとは限らず、時には仕掛品として長い時間「停滞」することになるのです。この様に工程内・工程間で停滞は発生するため、工程数の多い企業や多品種少量生産企業では必然的に停滞時間が伸びて行ってしまう=リードタイムが長期化してしまうのです。

それではリードタイム短縮のために何を行うべきかと言うと、各工程の実作業時間を出来るだけ連鎖させてモノが止まらないようにすると言う事です。とは言っても後ろ工程の機械を停めて、前工程からモノが流れてくるのを待たせると言う事は現実的にはできませんから、前工程から順に停滞なく(少なく)モノが流れるように工程の実作業時間が連鎖した生産計画を作ることが必要になってくるのです。要は各工程で待ち(停滞)が発生しないような生産計画を立案し、製造部門は生産計画通りに加工や組み立てを行うのです。これを「一気通貫生産」と言いますが、初工程から最終工程までがつながって一気通貫で流れるようになれば、製造リードタイムは大幅に短縮することが出来るのです。

ちょっと長くなりましたが、このリードタイム短縮は「一気通貫生産方式」や「安く作る技術」「強い製造・強い設計」などの書籍やアステックコンサルティングのホームページでも解説していますので、参考にしてください。