コストは全て人件費!

経営者向けセミナーなどで時々話している内容で「コストは全て人件費」という話があります。

別に「コスト削減のために人を減らしましょう」とかいう話ではなく、コスト構造自体の話であってコストの発生要因を探っていくと全て人に帰結するという話です。

どの企業でも原価計算は行っていると思いますが、その原価を大きく分けると材料費、人件費、各種経費、利益に分かれます(超大雑把ですが)。

そして原材料費は外注先や材料購入先の売価であって、同じように原価計算をすると購入先の原価は材料費、人件費、各種経費、利益に分かれるわけです。

更に購入先の更に先の購入先でも同じように材料費、人件費・・・に分かれれるわけです。当然ながら各種経費も同じように遡れますし、利益も何らかの形で投資されることを考えるとコストは多重に構成されたサプライチェーンの中で幾重にも人件費が積み重なってできたものと考えることが出来るんですね。

例えば鉄で考えると、鉄の大本は鉄鉱石であってオーストラリア辺りではその辺に転がっているただの無価値な石のわけです。ただその石を溶かして固めると鉄が出来て、その鉄は非常に有用なもので高く売れるという事になれば、人が集まって来て鉄鉱石を掘るわけです。更にたくさん掘りたいという事になれば、ユンボなどの建設機械を投入することになりますし、運搬もトラックなどを使うことになるのです。

つまり本来は自然の中の一部であったものが、人の手を介して掘り出されたり、形を変えて行く事によってそこに付加価値が生まれコストと言うものが発生するわけです。例として鉄をを上げましたが、これは現在流通しているものすべてに当てはまる話であって、全てのものの根源は天然物であり、何人もの手を介することによってコストは上昇して行くわけです。

この事から何が言えるのかと言うと、複数の工程を経るほどコストは上昇して行く事になるし、関与する人の数が増えるほど(間接も含む)コストは上昇するという事になるわけです。またこれはリードタイムの長さにも当てはまり、製品が完成するのに時間がかかるほどコストは上昇する可能性が出てくることになるわけです(待ちや停滞時間においてもコストは発生する)。

日本のような社会資本コスト(インフラや社会保障制度が高度なほど高くなる)の高い国では必然的に単位時間当たりのコストが高くなるため、他のアジア諸国と同じようなものを同じような作り方で作っていてはコスト的には勝てないのは当然なわけです。

そのため日本で同じような製品を作ろうと思えば、人の関与を徹底的に減らし、自己完結性を上げて、より早く作るか、付加価値の高い他の商品を作るかしかないわけです。

ただ残念なことに今の日本ではその両方に取り組んでいない様に感じてしまいます。アジア諸国と同レベルの商品を過去と同じような作り方でしか作っていないわけですから、人件費単価を下げることでしかコスト対応が出来ない。その結果日本の賃金水準は30年間横ばいになってしまったわけです。また外国人労働者の増加が近年とみに増えていますが、これは先ほどの賃金水準の引き下げ圧力になっているわけです。

まあ色々と述べてきましたが、社会資本コストの高い日本で製造業を続けていくためには、抜本的に作り方を変えられるように進化するか、より付加価値の高い製品を作る(新しいものに積極的にチャレンジする)しかないのではないかと思います。