フローコスト

ここのところ8月に行った公開セミナー「収益改善7つの切り口」の解説を行っていますが、今回は6つ目の切り口「フローコスト」について説明していきます。

今まで”見えないコスト”を含めてコストの新しい見方について解説してきましたが、フローコストもその中の1つで、コストは部門単位で発生するのではなく業務フロー(仕事の流れ)単位で発生すると言う事です。

一般的に労務費は部門単位で集計することがほとんどで、生産管理部門や調達部門、総務、経理など職制単位で取りまとめます。そのためコストダウン活動を行う場合でも労務費の削減は目標金額を部門単位に割り付けて改善を進めていくことになります。

しかし、実際のコストは部門単位で発生しているのではなく、業務フローごとに発生しているのです。例えば生産計画を立案するコストは生産管理部門だけで発生しているのではなく、生産部門や調達部門においても一定の工数は発生しているわけです。そのため本来のコストを算出しようと思ったら、それらの部門のコストも足し合わせていく必要があるのです。そのように仕事の単位、業務フロー単位で集計したコストの事をフローコストと呼ぶのです。

フローコスト

特に先の生産計画の例のように、複数部門が関与するような仕事では従来の部門単位のコストでは現実を正しく見ることが出来ないので、フローコストと言う視点で見ていく必要があるのです。

図表の例は外注加工依頼作成にかかわる業務フローを表したものですが、外注加工依頼コストは調達部門だけで発生するのではなく、生産管理部門や製造部門でもかなりの工数がかかっているのが解ると思います。流れから行くと、まず生産管理部門が作った計画を生産部門に伝達する作業が発生しますし、生産部門では生産計画通りに作れるかどうかの能力調査を行うことになります。その能力調査が終われば結果を係長や課長に伝達することになります。その上で能力が不足するようならば調達部門に外注加工以来を出すことになりますし、調達部門は加工以来が出来る外注先を探して発注することになります。当然ながら発注時にはコスト交渉も必要になってきますし、納期交渉も必要になってきます。この様に外注加工以来と言う業務だけでも複数の部門や人を経由することによっていろいろな部署でコストが発生するのです。

このフローコストはコストの発生源を明確に特定することが出来る手法であり、コスト分析においては非常に有用な方法と言うことが出来ます。更にこのフローコストを詳細に分析するためにはフローコスト分析という手法があります。このフローコスト分析はコストの発生状況を時系列的に把握する方法で、縦軸に業務処理に関与する部門や人を入れ、横軸に材料費や経費、直接人件費や間接人件費などを入れることによって1つの製品が完成するまでにどこでどれだけのコストが発生するのかを客観的に見れるようにする手法です。このフローコスト分析を行うと今まで見ることのできなかったコストの発生状況を細かく見ることが出来るようになるので、改善ターゲットを見つけやすく、結果も客観的に知ることが出来るので非常に有用な方法と言うことが出来るのです。

今回はフローコストと言う考え方について書かせてもらいました。この考え方は間接部門でも、直接部門でも使える考え方であり、コストは時系列と業務フローの中で発生するものであると言う事をしっかりと理解してもらえれば幸いです。

従来のコストダウン活動では成果が出なくなった、新たにやるべきことが見つからないという人は、このフローコストの考え方をベースに改善に取り組んでいってほしいと思います。

キーワードは「より早く」「より単純に」ですから、お忘れなきように!