損益分岐点分類

前回の「コストの見方の多様性」の続きです。

前回はお金の流れ分類として外部流出コストと内部消費コストについて説明しましたが、今回は損益分岐点分類について書いて行こうと思います。

損益分岐点分類は改めて説明する必要はないくらい有名なコストの分類方法です。コストを変動費と固定費に分けるやり方で、損益分岐点の算出や目標売上の設定などに使っていきます。

固定費とは人件費や家賃など生産量の増減に関係なく常に一定のコストが発生する部分であり、変動人は生産量の増減に伴って発生する原材料費などを指します。一般的には固定費比率を引き下げて変動比率を上げていく事になります。製造業の場合はどうしても人の関与が必要な作業が多いので固定比率が高くなる傾向があるので、この固定費比率を下げる改善が必要になってきます。

この固定比率を下げる方法として有用なのが、アステックが提唱している総枠型人員配置の考え方です。一般的に工場内の人員は各部署(部・課・係・班・チーム)に配属されることになりますが、多くの場合この部署の人員数は固定的で、過去の実績や経験などをベースに配員数が決まる形になっています。この様な人員配置の事を積上げ型人員配置(固定人員配置)と呼びますが、多少の他部署応援などはあったとしても基本的には部署単位で人を抱える形になります。

これに対して総枠型人員配置は大きな部門単位で人を抱え、部署単位の人員は仕事量に応じて配付するという考え方です。つまり会社として人員は一定数抱えておくが、各部署への配員数はその日その日の仕事の量によって変えていくというやり方です。基本的に仕事の量に合致した人員数しか配付しませんから、各部署の生産性は高いレベルで維持できるという考え方です。

このやり方で生産性が上がる理由は、まず基本的に積上げ型人員配置では過剰の人を抱える傾向があるという事です。多くの場合各部署の人員数はその部署の責任者の要求やや過去の実績などに基づいて人員数を決めることになりますが、この場合各部署の責任者は仕事が非常に忙しい時期を前提とした人員数の要求を行うことがほとんどです。実際問題として暇な時の仕事量を前提に人員数を決めてしまったら、忙しくなった場合に対応できなくなりますから、忙しい時を前提とした人員数を要求することになるのです。当然ながら忙しくないときには人が余剰気味になりますが、ここで人を減らすとあとで困りますから、常に忙しい時を前提とした人員数を確保しようとするのです。

それに対して総枠型人員配置では仕事の負荷量に応じて人員を配員するので、常に高い生産性で操業できるのです。ただここで考えないといけないのは、総枠型人員配置はすぐには実践できないと言う事です。基本的に配属した人がすぐに高いパフォーマンスを出せれば問題はありませんが、多くの場合そうではありません。ですから、作業の標準化を徹底して進めて、誰でもすぐに高いパフォーマンスを出せるような改善を進めておく必要があるのです。

この総枠型人員配置を行っていくための条件としては以下のものがあります。

・先に述べた、作業の標準化、マニュアル化が進んでいる事。

・日々の作業負荷を正確に把握することが出来ること。

・そして詳細な生産計画(日程計画:できれば分レベルで)を立案できること。

・中長期の負荷把握の精度が高く、負荷量に応じた派遣労働者数の調整が出来ること。

・生産トラブルが少なく、安定した生産が可能なこと。

・作業者も色々な仕事を一定レベルで経験している事(作業者スキルUP)。

他にも色々とやっておくべき項目はありますが、一定レベルでこれらの項目がクリアできるようになっていないと実現が難しいのも事実です。そのためこの総枠型人員配置は色々な改善を行った上で仕上げとして行っていく改善と言う事も出来ます。またこの総枠型人員配置を目的として、他の基礎的改善を積み上げていくと言う考え方もできます。実際にやってみると人員数は確実に減少し大きな成果につながりますから、ぜひチャレンジしていってほしいと思います。

損益分岐点の話から大分逸れてしまいましたが、損益分岐点を上げていくためには固定費の削減は不可欠ですから、このような方法もあると言う事を知っておいてほしいと思います。