佐川急便がEV車に切り替え

佐川急便が自社の配送車をEV車に切り替えて行くようです。

このEV車は日本のベンチャー企業(ASF社)が企画・設計し、製造は中国に委託しているようです。

2030年までにと書いてありますから、年間700台レベルで切り替えて行くんでしょうか。結構なハイペースだと思いますね。

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まあこの記事を見て感じたのは、「中国で作った車を輸入するようになったら、ますます日本で作るものは無くなってしまうなぁ」という事です。

自動車産業はすそ野が非常に広く、市場規模としては62兆3000億円(2018年)、日本の全製造業の出荷額に18.8%を占めています。言わば日本の基幹産業と言える産業ですが、これがEV車になり(政府が何の対策も打たないでいると)間違いなく輸入型のビジネスに切り替わると思います。わざわざコストの高い日本で作らなくとも完成品を輸入した方が安いですからね。

つまり日本の基幹産業である自動車産業に非常に大きな危機が迫っているのに、テレビやネットの反応がほとんどないのが非常に気になるんですね。反応があったとしてもCO2削減のためには・・・と言う反応であって、今そこのある危機が見えていないのかなと思ってしまいます。まさに尖閣が中国に取られようとしているのに何の対策も取らずに放置している状況と同じように感じます。

日本の自動車産業を壊滅させないためにも、政府は様々な手を打つ必要があると思います(単独メーカーではできないことも多い)。

まずは関税ですね。完成車の輸入に関しては一定の関税をかけるようにするべきです(10年程度?)。日本はTPPを始めとして多国間の自由貿易協定を色々と結んで(関税の撤廃)グローバル化を進めようとしていますが、基本的にこの政策は失敗だと思います。トランプ大統領がやったような国ごとの貿易協定、関税を有機的に使って国内産業を保護する政策が正解ではないでしょうか。残念ですが今や日本は産業保護をやらないといけない国になってしまったと思っています。

また全個体電池や高性能モーター、発電機などに思い切った予算を充てて技術開発を後押しすることですね。中国やアメリカなどでも主要産業には積極的に投資を行っています。基本的に投資金額と成果は比例関係にあると思うので、積極的な投資が不可欠だと思います(同時に特許戦略も重要です)。

次いで複数メーカー間での部品の共通化などコスト削減のための思い切った手も必要です。今までは顧客の好みに合わせるべく多品種化するのが常でしたが、複数メーカーで部品共用化を進めれば量産効果が出るので確実にコスト低減が見込めます。いわばかつてのガラケーからスマホへの転換のイメージです。機種ごとにバラバラな企画で作るのではなく、プラットフォームは共通でも「使い方」を変えることによって独自性を出せるようにするという事ですね(この辺は政府による働きかけが必要)。

そして規制の緩和ですね。新規事業者が積極的に自動車産業に参入できるようにしていく事が大切です。従来の自動車産業の人たちでは考えられないような新しい発想を引き出すためには新規参入者が絶対に必要だと思います。当然ながらベンチャー支援と従来の自動車産業各メーカーとのマッチングも政府主導で進めて行くべきですね。

今回の自動車のEV化と言うのは非常に大きなリスクである反面、やり方によっては大きなチャンスにもなり得るわけです。電池やモーター、制御技術などで世界の主導権を取れれば、自動車産業も当面は安泰という事になるのではないでしょうか(あくまでも当面だと思いますが)。