総枠型人員管理とは?

日も少しづつ短くなり、すっかり秋めいてきました。朝晩の気温も下がり始め、比較的過ごしやすい気候になってきたように感じます。

いつもこの時期は彼岸花が突然花をつけて、こんな所になぜ?いつの間に?と思ってしまうことがよくあります。まあ球根を持つ植物ですから、毎年同じところに咲くんですが、1年前のことは忘れていることが多いので、突然咲いたように感じてしまうんですね。

今日は「コストダウン7つの切り口」の中から、「総枠型人員管理」の話をしたいと思います。

製造業において各職場で働く人員数を決めるのはかなり大きな関心事である反面、明確な基準を持っている企業はそれほど多くないのではないかと思います。実際に多くの企業では係単位や職場単位で人員の定数が決まっている場合がほとんどで、生産量が多い場合も、少ない場合も職場内の総人員数は変わらない場合がほとんどです。部署間の応援体制を取っているところも多いと思いますが、その場合でも工場全体の総人員数はほとんど変わらないわけです(積上げ型人員管理)。

それに対して総枠型人員管理は仕事の総量から総人員数を決めて、各職場の負荷に応じて人員を配布していくスタイルを取っていきます。緻密な生産計画をもとに工場全体や各職場の負荷を算出し、その負荷量に応じて人員数を決めていくわけです。同じ職場であっても負荷量が変われば人員数が変わるという形になるわけです。

この総枠型人員管理は特に仕事量の変動が多い企業や生産量がやや減少傾向の企業において大きな成果が出てきます。これらの企業では多くの場合、最も生産量が多い場合を想定して各部門の人員数を決めている場合が多いので、生産量が少ない時期には労働力が余ってしまうのですが、現場の係長や課長は忙しい時期が来るのが解ってますから、ヒマな時期だからと言って抱えている人員数を減らすことはできないのです。パート主体の工場ではそのような時期には勤務時間を6時間にしたり、4時間にしたりする場合もありますが、社員は忙しくてもヒマでも8時間勤務ですから、どうしても余剰時間、余剰人員を抱えてしまうことになるのです。

総枠型人員管理

これだけ聞くと「当社も総枠型人員管理」に変えようという声がすぐに聞こえてくるのですが、これを行うためにはそれなりの管理レベル、改善レベルが必要で、簡単にすぐ始められるわけではありません。結構難易度が高い取り組みも必要になるので、それを簡単に説明します。

まず必要なのは「工数負荷を正しく予想する」と言う事です。負荷が明確にならなければ配布する人員数を決められませんから、負荷予測は非常に重要なわけです。ただこの負荷予測を正しく行うためには、精度の高い生産計画が立てられること、標準工数だけでなく実際工数が正しく把握できること、現場での生産遅延要素(設備故障や品質不良など)が少ないことが上げられます。特にこの3つは総枠型人員管理を行うための基礎条件になりますから、それなりの精度で出来ていることが必要なのです。

また従業人の多能化レベルも高い必要があります。実際には「どこの職場に行くのか分からない」という話ではなく、「3,4か所の職場の中でローテーション」と言う形になる場合がほとんどですから、行く場所はだいたい決まるようになるのですが、それでも多能化を進める必要性は極めて高いのです。そして新人なども色々な職場に行く場合があるので、教育のための「作業の標準化」も非常に重要になります。特に大切なのは「作業」と「判断」を分離して、新人作業者には「作業」だけを行わせる仕組みを作ることです。多くの企業で作業標準書はあると思いますが、その多くは社員を前提にしたもので、作業と判断が明確に分類されていない場合が多いので、新人作業者が多い職場では一度見直して作業と判断の分離を置くなっていく必要があるでしょう。

これら以外にもリードタイムを短くして生産計画立案の自由度を上げる(前回説明した部分)とか、生産の進捗状況をリアルタイムで把握する取り組み、平準化を進めるための取り組みなどが必要になりますから、継続的な改善活動が必要になってくるのです。

この総枠型人員管理は、労務コストを管理する上で非常に大きな成果を出せる取組みですから、ぜひチャレンジしていってほしいと思います。仮にすぐに総枠型人員管理が出来なくても、それまでの改善の途上で色々な成果が出てくるのは間違いありませんから、積極的に取り組んでいってほしいと思います。

実際問題として総枠型人員管理を実施する場合には、コンサルティングを受けたほうが実現までの速度が大きく変わりますから、検討の中に入れておいてもらえたらと思います。