成果報告会に行きました②

先日は午前中に参加した企業(設計部門改善)の成果発表会の状況を書かせてもらいましたが、今回は午後に参加した特殊部品製造メーカー(こう書かれると何の会社かわからない!)の成果発表会で感じたことを書かせていただきます。

このクライアントさんでは小集団型の改善活動を行っており、複数の工場で結構長い期間コンサルティングさせていただいています。今回参加させていただいたのは活動を始めて2年の工場で、基本的に選抜された複数チームに対して指導会を行っています(改善チーム総数はかなり多い!)。

今回の発表では多くのチームが「作業量に応じた工数管理」を主テーマとして取り組んでいましたが(担当コンサルが誘導した?)、成果的には非常に素晴らしい結果が出ており、平均で19.4%(前年対比)の生産性向上を実現しています。最も高い上昇率を示したチームでは35%(前年対比)の生産性向上を実現しており、1年でここまで変化させるためにはかなりの努力があったのではないかと思います(お疲れさまでした)。ちなみに生産性をここまで上げようとすると、個人レベルの頑張りや昭和的な気合と根性でどうにかなるものではなく、しっかりと部門管理の仕組みを作らないと実現できませんから(単なる作業改善では無理!)、製造管理面での仕組み改善をしっかりと行ったのだろうと思います。

他にも色々な発表がありましたし、中には工数管理には目もくれず、ひたすら品改善・不良削減に全エネルギーを振ったチームもありました(データ量がスゴイ)。今回の発表は全体として非常に密度の濃いもので、管理職のサポートも十分に受けた上での改善であり、非常に楽しく聞かせてもらいました(管理職にはもっとガンバレとコメントしましたが・・・)。

今回は小集団型の改善がベースになった活動でしたが、このタイプの改善を希望される企業さんは結構多いですし、実際に生産性向上につながるので私どもとしても良く提案させていただいています。ただ注意しないといけないのは「現場のボトムアップ型の活動」にしてはいけないという事です。なぜ? 小集団活動だからボトムアップ型(製造現場からの提案がベース)ではないの? と思うかもしれませんが、実はそこに大きなヒントが隠されているわけです。

今の小集団活動のベースは太平洋戦争後に荒廃した日本の製造業を立ち直らせるためにアメリカからデミング博士を呼んで始まったQC活動を発端としています。1970年代、1980年代には日本で相当流行りました(日本製品の品質向上に一役買ったのは間違いなく、デミング賞と呼ばれる賞もできた)。いわゆる品質問題を中心に活動していたのでQC活動と呼ばれていましたが、やがてテーマが生産性向上や作業改善などにも広がるようになり小集団活動と呼ばれることが多くなったような気がします。

日本では過去から欧米から来た改善手法や改革手法を大変有難がって崇拝する傾向があるのですが、年数がたつにつれやがて忘れ去られて「そういえばそんな手法あったね」と呼ばれるようになってしまいます(具体名を出すとヤバい感じがする)。ただその中でもしっかりと日本に根付き、全国にくまなく広がったのはこの小集団活動(QC活動)だけではないかなと思っています。

これには日科技連さんなどの努力の結果もあったと思いますが、私は小集団活動が日本人の気質に非常に合っていたのではないかと思います。グループメンバーで議論を繰り返し、みんなで考えて、みんなで行動する。そして努力の成果をみんなで分かち合うというスタイルが日本人の特性に合っていたんだと思います。多くの日本人はオタク体質ですから、疑問があれば徹底的に追及して原因を究明し、問題を解決してしまう所も小集団活動には相性が良かったんだと思いますね。

ただ当時は量産を前提とした「作れば売れる」時代であり、小集団の改善成果も生産量に比例して発現していましたが、残念ながら多品種少量生産環境が進展するにつれ改善成果はあまり出ないようになってきました。いわゆる低成長時代に入った1990年代からは小集団活動も低調になってきたように思います。やがて小集団活動は「そう言えば昔はよくやった」活動になったんじゃないかと思います。

ただこの小集団活動はやり方を変えれば今でも大きな成果を残せる活動であることは間違いありません。ポイントになるのが先に述べたボトムアップの所です。まあ簡潔に言うと「ボトムアップ」から「トップダウン」への転換が小集団活動で大きな成果を上げるポイントになります。つまり、活動テーマはトップダウン、具体的な改善行動はボトムアップというのが現代(多品種少量生産環境)における小集団活動のコツなんですね。

詳細は当社のホームページに書いてあるので参考にしてほしいと思いますが、当社ではそれを課題達成型小集団活動と呼んでいます(いろんなところでセミナーもやってます)。トップが広い視野で会社の中の問題(受注から出荷までの生産フロー上の問題)を小集団に提示し、それを小集団で解決していくというやり方ですね(目標管理に近いイメージもあるが、ちょっと違う)。ポイントになるのは管理職の動きと他部門との連携になります。分かり難いかもしれませんが、小集団とPJ活動、タスクフォース活動を混ぜて煮込んだみたいな感じです。

話が長くなってしまいましたが、小集団活動はやり方によっては今でも大きな成果が出せる手法ですし、日本人の特性にも合致しているやり方なので、今一度小集団活動に取り組んで見られたら如何でしょうか。思ったより成果が出るかもしれませんよ。