間に合わせるために発生するコスト

秋が急激に深まってきていますね。テレビやネットなどでも紅葉(こうよう)の話題が増えてきています。紅葉は主として落葉広葉樹が葉を落とす際に現れる現象で、葉の中に含まれる葉緑素が分解吸収された結果、もともとの葉に隠れていたカロチノイドが目立つようになってくる場合を黄葉、葉を落とす前にアントシアニンが形成された結果、葉が赤くなるのを紅葉と言います。実際には紅葉・黄葉に加えて褐葉(タンニンの増加による)もありますが、褐葉は美しくないので(枯れ葉色)、紅葉や黄葉に目が行ってしまうことになりますね。

前々回に引き続き、今回は収益改善7つの切り口の5番目「調達フローの問題点」について書いて行きたいと思います。

調達フローにおける問題点は一般的に納期管理、コスト管理、品質管理の3つの問題が中心になりますが、発生した現象面から考えていくと「間に合わせるために発生するコスト」が調達面におけるコストアップの極めて大きな要因であることを知っておく必要があります。

通常、製造業において最も避けなければならないのは「納期遅れ」を発生させることです。当然ながら納期遅れを発生させると取引先は激しく怒ることになりますし、自動車産業などでは納入先のラインを停めたら損害賠償を請求されることにもつながります。そのため、多くの製造業では納期遅れを出さないことを最優先に仕事を進めていくことになりますし、多少のコストは犠牲にしてでも「納期を守る」ことを優先してしまう事になるのです。

この納期最優先の考え方から生まれるのが「間に合わせるために発生するコスト」と言う事になります。そしてこの「間に合わせるためのコスト」は、まさに見えないコストであり明確に金額換算できませんが(金額換算できる部分もある)、かなり大きいことは明らかです。

間に合わせるためのコスト

具体的に発生する「間に合わせるためのコスト」として代表的なものとしては、以下のものがあります。

まず物流時間を少しでも短縮させるために、航空便や宅急便、専用便を仕立てるなどは非常によく使われている例です。要は納入日を数日を短縮するために大きな配送費アップが発生することを許容するわけです。

また、外注先に納期変更をしょっちゅう依頼している企業では、外注先もそうなることは分かっていますから、最初から特急対応の値段込みで見積もりを出すことになります。当然ながら資材部門は少々高くても納期に間に合わせてくれる外注先のほうがありがたいですから、値段が高くても買ってくれるわけです。

そして納期遅れがクレームにつながる例も数多くあります。普段から納期遅れが多発している企業では、製品組立時に欠品している部品だけを除いて組み立てられるところは出来るだけ早めに組み立てておく場合があります。そして欠品部品が来た段階でそれを取り付けて出荷するという形を取ろうとするのですが、結局ねじの締め忘れや部品の取り付けミス、欠品部品以外の部品の取付忘れなど、顧客に納品してから指摘されるクレームが続発してしまうことが多いのです。

この様に「間に合わせるコスト」は多くの企業で発生しているのですが、このコストを本格的に削減しようとしている企業はそれほど多くありません。どちらかと言うと必要悪(多少コストが上がっても欠品するよりはマシ)という捉え方をしているところが多いんじゃないかと思います。

この「間に合わせるためのコスト」は決して調達部門だけの責任ではありませんが、どうしても矢面に立つのが調達ですから、「調達部門はもっと頑張れよ」と言う事になってしまうのです。

この様に「見えないコスト」は社内の色々な所にはびこっています。納期に間に合わせるという正義のために発生するコストだから”止む無し”と考えるのか、本来のあるべき姿と比較して”変えるべき”と思うのかが企業収益アップの分かれ目になるんじゃないかと思います。

簡単に解決する課題ではありませんが、「必ず解決する」という強い気持ちは持ち続けてもらいたいと思います。