教育水準の低下が悩ましい

ウクライナ情勢に関して最近はロシア軍のダメっぷりばかりが報道されていますね。キエフ周辺ではロジスティクスの破綻により最前線の兵士は何の補給も受けらずに崩壊の危機にあるようです。何かかつての日本軍のような感じになっていますから(壊滅寸前)、停戦協議が今後進展するのではないかと期待しています。

もうすぐ新たな書籍「儲かる企業流行っている「見えないコスト」削減!」が発売されるという話をしましたが、今回からその新書籍に書いている内容について少しづつ説明して行きたいと思っています。

実は前回書いた「企業のトラブル数と人員数は比例する」という話も新しい書籍に書いているのですが、今回は「現場の改善レベルは20年前より落ちている」という話をしたいと思います。

これは長年コンサルタントとして色々な企業の指導を行ってきた経験から言えることなのですが、「現場の改善レベルは20年前より落ちている」というのは間違いない事実です。簡単に言うと20年前であれば現場のオペレータが簡単に処理していたようなトラブルも現在ではその対処に非常に時間がかかったり、専門業者を呼ばないと対処できないなど現場における基礎的な技術力と言うか改善力が明らかに低下しているのです。

こうなってしまっている原因の1つは「正社員比率の低下」にあります。今から20年前、30年前の製造現場はほとんどが正社員であって、食品産業などでは一部直接雇用のパートタイマーがいたりしましたが、それでも正社員比率は80%以上あった企業が多かったのではないかと思います。

それに対して現在は製造現場の正社員比率が50%以下の企業がかなり多く、中には正社員比率が10%程度の企業もあるのです。代わりに増えたのは派遣社員であり、最近は外国人技能実習生がかなりの比率を占めている企業もかなり見聞きするようになっています。

この正社員と派遣社員技能実習生で何が違うかというと、それは教育です。それこそ20年前、30年前はどの企業においても社員教育にかなり力を入れていましたが(専門の教育部門を持つ企業も多かった)、現在は当時に比べると明らかに教育の機会は減っているように感じます。それでも正社員に対しては何らかの形で教育活動を行っている所が多いのですが、派遣社員に対して教育活動を行っている企業はほぼ皆無です。技能実習生に対しても作業のやり方は教えていますが、いわゆるマネジメント教育や改善教育、商品知識教育を行っている企業はほとんど無いのではないでしょうか。つまり製造現場における教育レベルは20年前に比べて明らかに低下しているという事が言えるのです。

私は現場の改善レベルが落ちた最も大きな原因はこの教育水準の低下によるものだと思っています。現在はIEや工程分析などを知らない現場監督者も多く、工場内で発生しているトラブルを自ら解決することが出来なくなっているのです。やはり教育というのは非常に大切で、問題の解決方法を知らなかったら対処できませんが、知識上であっても問題の原因の追究方法や解決のための手段を知っていればそれなりに対処することが出来るのです。

日本の製造業では20年前と製造方法が抜本的に変わっている企業は非常に少ないのではないかと思います。多くの企業は20年前と同じような製品を、同じような技術を基にした、同じような製造方法で作っている訳です。つまり製造技術がほとんど変わらない状況で現場の知識水準が大幅に低下しているため管理水準も低下し、工場としての収益性が低下しているか、ほとんど変わらない状況になっているのです。

これらの状況に対応するための方法としては以下の2つの方法があります。

1つは製造現場における正社員比率を上げ、教育水準の向上とともに現場の改善レベルを上げて生産性を向上させる方法。これはいわゆる日本的モデルであって、社員の知恵や工夫を取り込んで成長していくモデルです。

2つ目は徹底的に作業を標準化し、新人でもその標準に沿って作業を行えば問題は発生しないという形を作る。改善は専門の人材が実施し、作業者は作業のみに特化するという方法です。これは欧米型の取り組みであって、作業者と管理者、改善者の機能と権限を明確に分けるやり方という事が出来ます。

どちらの方法を取っていくかは企業(トップ)の考え方次第という事になりますが、近いうちにどちらかを選択せざるを得ない時期が来るんじゃないかと思います。

日本型モデルの再興か、欧米型モデルへの転換か、皆さんはどちらを選択すべきだと思いますか。