DXレベル5について

DXレベルの話を今まで書いてきましたが、いよいよ最後のDXレベル5について話をしていきたいと思います。

もうすでに何回も書いていますが、DXレベルの基本的な考え方は以下の通りです。

レベル1:社内で使っている紙データをデジタル化する段階

レベル2:デジタル化したデータを使って各種改善を行っていく段階

レベル3:デジタル技術を使って、業務フローを対象した改善を行う段階

レベル4:デジタル技術を利用して、会社全体の仕事の流れを再構築していく段階

レベル5:社外も含めてサプライチェーンの流れを再構築して行く段階、及び新たなビジネスモデルを構築する段階

この様にDXにはレベルがあり、基本的にレベル1から順に進んでいかないとレベル3や4に到達することはできません。データのデジタル化が進んでいないと、そのデータの活用が出来ないと言うことですね。

今回話をするのは最終的なレベル5についてですが、このレベルは非常に難易度が高く簡単に実現できるというものではありませんし、特定のシステムを入れれば何とかなるという類のものでもありません。会社として明確な方針を定めたうえで、5年、10年かけて取り組んでいかなければ実現することが難しいレベルなのです。

具体的にDXレベル5とはどういう状態かというと、これはサプライチェーン全体を管理することで中間層を排除し、利益の最大化を図るということになります。DXレベル4では社内におけるモノの流れ、情報の流れを最適化することによってムダを排除し収益性を上げることが目的だったのですが、DXレベル5ではその対象は自社だけでなく取引先や顧客など自らのビジネスモデルに関与する全ての流れを対象とした改善ということになります。すぐには分かりづらいかもしれませんが、要はサプライチェーンの流れ全体を対象にした業務フロー改善ということになります。当然ながら自社以外の企業にも参画してもらわないと実現できませんから、極めて難易度が高い取り組みであることは分かってもらえると思います。

そしてこのDXレベル5を実現していくためには企業規模やサプライチェーン上の立ち位置も非常に重要な条件になってきます。外注先や仕入れ先、場合によっては顧客までを含めた流れを改善していくわけですから、それなりの企業規模が必要になってくるのは間違いのないところです。いわゆる部品メーカが自社主導でDXレベル5を実現しようとしても最終組み立てメーカーがOKと言わないと実現は出来ないわけです。特に商流自体が大きく太い流れであるならばその傾向は非常に強くなるのは間違いありません。いわゆるニッチ市場での対応ならば可能性はあるのですが、大きな商流になる分野においてはやはりセットメーカー(最終組み立てメーカー)主導になってしまうのは間違いないところでしょう。

またこのDXレベル5を考えるときに必要になるのは、利益の源泉がどこにあるのかということです。基本的にこのレベルを達成しようと思ったときには相当な投資が必要になることは間違いありません。基本としてサプライチェーン上の各企業が参画できるシステムの構築が必須ですし、基本的な情報インフラを同じものにする必要があります。また部品メーカーの進捗をリアルタイムで見ようとする場合にはそれ用のソフトを導入する必要があるわけです。他にも色々と必要になるシステムはあると思いますが、少なくともこれだけでも億単位のシステム投資が必要になるわけです。それではこの投資をどこで回収するのかということになりますが、これがいわゆるムダ取りで回収できるかというとそれは無理なわけです。ムダ取りを前提とした改善を一生懸命やって各段階でコストダウンを行ったとしても各企業で得られる利益額はとても投資に見合うものではないのは明白なわけです。

それではどこで投資を回収するのかと言うと、これは中間階層を排除することによって今まで中間層が得ていた利益を、DXレベル5推進の母体である最終組み立てメーカーが総取りすることによって利益を確保するということになるでしょう。要は今までサプライチェーン上にはティア1やティア2、ティア3などと呼ばれる大手部品メーカーがあったわけですが、デジタル技術の発展に伴い今後は最終組み立てメーカーが末端の部品メーカーまで全ての関連メーカーを直接コントロールすることが出来るようになるので中間のティア1、ティア2といった階層は不要になってしまうのです。そしてそれらの層が得ていた利益を最終組み立てメーカーが得ることによって収益力を上げていくのです。

そしてこの話は夢物語でもなんでもなくもうすでに始まっている事で、飛行機産業や欧州系の自動車メーカーなど産業構造がはっきりしている業界では今後どんどん進んでいくものと思われます。他にも産業構造が深い業界や関連企業が非常に多い業界では間違いなく進展していくでしょう。つまりDXには最終的に産業構造自体を大きく変えていく力が秘められているわけで(階層構造→フラット化)、DXのベースになっているインダストリアル4.0が第4次産業革命と呼ばれている理由もそこにあるわけです。ですから社内システムを入れ替える程度でDXが出来たと考えるのは早計で、自社を含めたサプライチェーン全体を変革することがDXの最終的な目的になるわけです。

それでは部品メーカーは待っていればDXの流れが来て安泰かというと、そういう訳でもありません。デジタル技術が進展したといっても管理すべき企業数が増えると大変なのは間違いありませんから、最終組み立てメーカーもある程度の絞り込みは行っていくと思いますし、ティア1やティア2がいなくなった分部品メーカーは品質保証責任や生産量増減に応じた供給責任、場合によっては新技術開発能力も求められるようになりますから、部品メーカーに対してもある程度の規模が求められるようになると思います。例えば資本金は3億以上とか、従業員数500人以上など取引上のトラブルが起こっても自分で対処できるだけの力は必要になるでしょう。そのため小規模な企業に関しては合併や統合の依頼が来るかもしれません。中小企業の合従連捷が加速されることもDXの側面として考えていく必要があるでしょう。

今回はDXレベル5について話をしてきましたが、実はDXレベル5にはもう一つの意味合いがあります。次回は別な視点でのDXレベル5+αについて話をしていきます。

 

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