DXレベル4について

今まで何回かブログの中でも案内してきた「製造業DXの進め方」のセミナーが、先週無事に終了しました。今回のセミナーは創業20周年記念セミナーと言う形で開催しましたが、8/24、8/26の2日間で300人近くの人に参加していただき、非常に盛況であったと思っています(中には1アカウントで10人以上が視聴していた企業も結構あるようですから、聴講者総数はもっと多いと思います)。ありがとうございました。

今回のセミナーは基本的に経営者クラスの方を対象にしていたのですが、視聴後の感想を色々聞いていくと、多くの方々からDXとは何? 具体的に何するの? ERPシステムを入れ替えること? などと言ったDXに関する基本的な部分に疑問をもって参加された方が非常に多かったように思います。幸いにも今回のセミナーで「DXの目的ややるべき事がよく分った」という声をたくさんいただきましたが、多くの方がDXと言う言葉に惑わされて中身がよく分らないままDX推進活動に動いているように感じています。

そのため正しい情報発信を行う事は非常に重要な事であると改めて感じている次第です。今後も出来るだけ詳しくDXなどの情報を発信して行きたいと思っています。

 

前回までDXには5つのレベルがあるという話をしてきて、DX3までの説明をしてきました。今回はその続きであるDXレベル4について話をしたいと思います。ちなみに当社(アステックコンサルティング)で規定しているDXレベルは以下の通りです。

レベル1:社内で使っている紙データをデジタル化する段階

レベル2:デジタル化したデータを使って各種改善を行っていく段階

レベル3:デジタル技術を使って、業務フローを対象した改善を行う段階

レベル4:デジタル技術を利用して、会社全体の仕事の流れを再構築していく段階

レベル5:社外も含めてサプライチェーンの流れを再構築して行く段階、及び新たなビジネスモデルを構築する段階

DXレベル3では活動対象が仕事の流れ、業務フローの簡素化、効率化になるという話をしましたが、DXレベル4では更にその対象が広くなります。具体的にはDXレベル3の段階では部門内や職場内の業務フロー(例えば帳票の作成フローや承認フロー、経費の精算フローなど)を変えて行く事がメインになりますが、DXレベル4では会社としての基本的な仕事の流れ、いわば受発注の仕組み自体を変えて高効率化・低コスト化を行っていくという様な流れになります。

分かり易く言うと、一般的な製造業には5つの基本業務フロー(営業フロー、生産管理フロー、設計フロー、調達フロー、製造フロー)がありますが、これらの基本フロー自体を改善し効率化・低コスト化して行くという事です。仮に営業フローであるならば、顧客と面談し商品を売り込む、そして顧客から受注をもらったらその情報を業務部門もしくは生産部門に伝達するという流れが基本フローです。そしてその中で新たな設計要素が入ってきたならば、設計部門とも連絡を取り合って図面を完成させるという流れも加わってきます。このように営業フローと言っても営業部門だけで完結するのではなく、複数の部門と連携しながら仕事を進めて行くわけですが、DXレベル4ではこの基本フロー自体を効率化することが求められるという事になります。

正直言ってかなり難易度の高いフロー改善という事になりますが、イメージ的には今の業務の流れの悪い所をピックアップして改善して行くというよりも、全く新しく業務フローを設計したならばどうなるのか、今の技術で最も効率的な仕事の流れを作るとしたらどうなるのかと言う視点で考えて行く事が大切なわけです。そして理想のフローが設計できたならば、現状の業務フローと比較して改善すべきポイントを明らかにしていくという事になるのです。その中で新しい技術やツールが利用できるのであれば積極的に活用し、より効率的な業務フローを作り上げて行くのです。

先ほどの営業フローの例で言えば、営業フローの理想としては「顧客と面談をして注文依頼があったならば、その場でタブレットを使って必要情報を入力すれば工場の負荷状況が明確に見えるとともに、今発注したら商品がいつラインに投入されて、いつ完成するのか、そしていつ納品できるのかが即時に明確になり、顧客とその情報を見ながら納期を決める」という流れが理想的なわけです。当然ながら発注をかけたらその時点で生産計画に展開され、自動でBOMに分解され部品メーカーに即発注することも一連の流れの中で自動で行われるわけです。

このように理想のフローを描いた上で現状のシステム(業務フロー)とのギャップを明確にし、理想を実現できるように改善を進めて行くわけです。当然ながら理想フローを実現させていく上で新しいツール・技術が必要になってくる場合も多いと思うので、その場合は積極的に新ツールなどを導入して行く事が望まれます(予算の範囲内ですが)。営業フローの例で言うならば、「タブレットで工場の負荷状況が見える」「タブレットで発注行為が完了できる」「受注後にリアルタイムで生産計画に展開される」「計画に応じて材料を自動発注する」などが求められる新しい技術であり、これらを実現することで先の理想の営業フローが完成することになるのです。

注意してほしいのは先に理想フローがあって、それを実現するために新しい技術やツールを使っていくのが本来であって、ツールや新システムが先にあるわけではないという事です。良く間違われるのがこの部分であって、新しいシステムや新しいツールを入れることがDXではないという事を理解しておいてほしいと思います。やりたいことを実現するためにツールを利用するという視点を忘れないでください。

このようにDXレベル4を実現するのには結構時間もかかりますし、投資もそれなりに必要になってくる場合がほとんどです。ですからDXレベル4を目指していく場合には5年から10年かけて実現して行くというイメージを明確にしておく必要があります。決して1年程度で何とかなるものではないと理解しておいてほしいと思います(DXレベル1・2ならば1年程度で大丈夫)。

ちょっと長くなりましたが、DXレベル4のイメージは湧きましたでしょうか? まずは理想の業務フローを描くという所から始めて行ってほしいと思います。