DXレベル1について

前々回に引き続きDXについて話をしていきたいと思います。

DXには5段階のレベルがあるという話を前々回にしました。

レベル1:社内で使っている紙データをデジタル化する段階

レベル2:デジタル化したデータを使って各種改善を行っていく段階

レベル3:デジタル技術を使って、業務フローを対象した改善を行う段階

レベル4:デジタル技術を利用して、会社全体の仕事の流れを再構築していく段階

レベル5:社外も含めてサプライチェーンの流れを再構築して行く段階、及び新たなビジネスモデルを構築する段階

以上がDXにおける5つのレベルという事になります。ただ注意しておいてほしいのは、この5段階は世間的に確定したというものではなくアステックコンサルティングとしての見解という事です。日々コンサルティングで多くの企業の皆さん(1部上場企業から零細企業まで)と接触するとともに、IT系のツールを扱っている企業の皆さんとの接触を通じて得られた知見を基にして作ったものです。いわばコンサルティングの中での肌感覚で得られた知見と言うことが出来るかもしれません。ちなみに経済産業省のDXレポートや大手ITベンダーの見解はほとんど考慮していないので、よろしくお願いします。

今回はレベル1について話をしていきたいと思います。

レベル1は社内で使っている紙データをデジタル化する段階と言うことが出来ます。このデジタル化して行くデータとしては以下のものがあります。

① 帳票や日報などの紙資料に記載されているデータ

② データとしては存在しているが取りまとめられていないもの

③ 全く収集も活用もされていないが、使えば有用となる情報

これらが会社の中に存在しているデータという事になりますが、これらのうちある程度の形として存在しているのは①のデータですが、多くの場合これらの情報は紙に記入されている状態で活用できるデータにはなっていません。一部の重要情報はエクセルに転記されたり、社内システムに転記されたりしていますが、データベースの構造上使い勝手の良いものにはなっていない場合がほとんどです。

これらの情報・データを活用しやすいデジタルデータにしていくのがこのレベルの目的であり、実現出来た状態がDXレベル1と言うことが出来ます。実際問題として一番の基礎部分であり、これが出来ていないとレベル2やレベル3などの上級レベルに行くことは出来ませんから、しっかりと実施して行く事が非常に重要なステップと言うことが出来ます。

デジタル化して行く手順としては先に述べた①~③の順で進めて行くのが良いと思います。①の日報や帳票などに取りまとめているデータと言うのは、現状でも活用している重要データという事ですから、まずこの情報をデジタル化して行く事が先決ですね。

この日報や各種帳票をデジタル化して行くときに使用すると便利なのが「電子帳票ソフト」という事になります。基本的には帳票フォーマットをエクセルで作成し、その帳票フォーマットをタブレットスマホ上で入力できるようにするアプリで、日常よく使っているであろうエクセルの感覚で使うことが出来るので割と簡単に使いこなすことが出来ると思います。入力したデータはそのままデータベースに保存できるので、後からデータを引っ張り出して分析することも出来ますし、設定の仕方によっては入力時に異常データであればアラームを鳴らすようにすることも出来ます。デジタル化されればそのデータ自体が意味を持ちますから、色々な操作を行う事が可能になってくるわけです。この電子帳票はまさにDXを進めて行く第一歩と言うことが出来ますね。

電子帳票アプリは現在は色々なメーカーが作成していますが、現時点での有名どころとしては「i-Reporter」「Xc-Gate」が上げれられるでしょう。他にも「Joy Comes-Re」など設備監視などと連携したソフトもあります。これらの機能は基本的には同じようなものなので、良く調べた上で自社に適したものを選べばよいと思います(当社が推薦しているのは「Xc-Gate」と「JoyComes-Re」です)。基本的にはデータベースに対する入力アプリですから、今後も色々なものが出てくると思います。

②の「データとしては存在するが取りまとめていないもの」とは、毎朝の設備点検データであったり、設備稼働率やチョコ停記録、冷蔵庫の温度や蒸気圧、空気圧などのユーティリティー関係のデータなどが上げられると思いますが、これらも生産上で重要なデータですからデジタルデータ化して行く必要があるでしょう。これらに関しても①で述べた電子帳票を使っていけば良いでしょう。

また③の全く使っていないが使えば有用となる情報としては、設備の振動や音、温度、空気の流れや温湿度データなどが上げられますが、②のデータも含めて稼働監視系のアプリを使えば色々と参考になるデータを収集することが出来ます。これらは設備などの色々なセンサーを付けて状況を監視するもので、使用するセンサーによって実に多岐にわたったデータ収集をすることが可能になります。要はアイディア次第で色々なデータを取ることが出来るようになり、今まで全く想定していなかったような結果を出すことが出来るようになるのです。この典型的なものが設備の故障予知で、振動や音を収集することによって設備が壊れる前にアラームを出すようにすることも可能なのです。

このようにDXレベル1は、今まで使えていなかった情報をデジタル化することによって使えるようにするというステップであり、これだけで大きな成果を上げられるという訳ではありません。よく投資対効果うんぬんを言う人がいますが、DXに関してはレベル1は次のレベル2や3に行くための段階であって、投資対効果を問うのは全くのナンセンスです。そういうことを言う人は基本的に頭の回転が悪い人だと思いますが、ホワイトボードやマジックを買ったとしても効果云々を言うんだろうなと思います。

DXを進めて行く場合にはまずこのレベル1でデータのデジタル化を行わないと話が始まりません。いきなり広範囲のデジタル化を行うのは大変だと思いますから、先に述べた①~③の順で進めて行ってもらえればと思います。

 

ちなみに8月24日と26日にDXのことを詳しく解説するセミナーを実施するので、よかったら参加してください。今回のセミナーはアステックコンサルティング設立20周年記念事業の一環として無料で実施するので大変参加しやすくなっています。

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